今回は、個人で経営コンサルタントをする場合の成功するために必要なことを、私自身の経験から書き出してみる。
私の場合は、主に日本企業をクライアントにして、米国を中心とした海外でのイノベーションの調査や、米国内のスタートアップ企業や大学の研究室へのアプローチと協業・共同研究のアレンジなどを行ってきた。そこで学んだ成功の要件を以下に紹介する。
顧客より絶対的に高度な知識を持つこと
コンサルタントとして契約をもらうには、顧客よりも多くの知見を持っていることが最低条件になる。これは顧客の持つ知識レベルとの相対的な比較なので、最初のプレゼンの場面では、顧客より1ミリでも多くの知識を持っていれば、それを誇張して契約を取ることはできる。ただし、これはコンサルタントの営業テクニックであり、本当に成果を出すためにはコンサルタント自身がさらに勉強をして、顧客より圧倒的に高度な知見を持つ必要がある。そこは努力して勉強する必要があることを忘れてはいけな。
顧客の期待を上回る成果を出し続けること
コンサルタントの仕事では、常に顧客の期待を上回る成果を出し続けなければ、顧客は満足してくれない。一度顧客を失望させると、次の契約はもらえなくなる。
“個人事業主の辛い面”の記事でも触れているが、コンサルタントの仕事には「仕事の合格点がない」。これが状況を複雑にしている。どこまでやれば“合格”なのかが判らないので、常に過剰ではないかと思えるくらいの成果物を提出しなければならない。少しでも慢心して“こんなもんでいいだろう”と思ったら、顧客に見抜かれる。
少数のクライアントに丁寧に向き合う
個人で、それも一人で業務委託をこなすには量の限界がある。業務の内容にもよるだろうが、せいぜい10社がいいところだろう。私の場合は、同時に抱えるクライアントの数は最大で5社程度だったので、それぞれのクライアントに丁寧に向き合うことができた。丁寧に向き合うとは言っても、量(時間)的な限界があるので、プロジェクトがうまく進まない場合や、情報だけ求めて契約をしない相手は、こちらから切ることも必要だ。
顧客からの信頼を得て成り立つ関係
経営コンサルタントもサービス業だ。営業もサービスも事務も自分でやる。サービスの内容が良いだけでは顧客はつかないし、継続もしない。顧客はあなたの人間性も見ている。専門性や知識量、問題解決能力などと同時に、「この人に頼みたい」と思われなければ、新規契約も継続もしてもらえない。つまり、相手に信頼されることが必要だ。
何もコンサルタントに限ったことではない。大きな買い物やなじみのないサービスの購入を決めるとき、人はその窓口(たいての場合は営業の人)が信頼できるかを見極めて決める。
「できない」と言ったらそれで終わる
相手に聞かれて「できない」とか「わからない」と言ってはいけない。その場で話が終わってしまう。「できない」とか「わからない」と言っていいのは、あなたが一流のコンサルタントになったときだ。“この人が言うのなら、これはまだ世の中に解のない課題なのだろう”と思わせるほど信用されている場合だ。
「できない」と言う代わりに“こんな風にやってみることが考えられます”と方法論を提示する。「わからない」と言う代わりに“調べてみれば、面白いことが判るかもしれませんね”と調査を提案する。相手が乗ってきたら、あとは必死でやるだけだ。
クライアントの真のニーズに取り組む
コンサルティングで失敗する最大の要因は、顧客の真のニーズを理解していないことだ。顧客自身が真のニーズに気づいていないこともあるし、それをうまく伝えられていないケースも多くみられる。コンサルティングで最初にやるべきことは、顧客が解決したい課題は何かを顧客から引き出すことだ。これが不十分なまま業務を実施すると、出てきた成果が的外れなものになって、“やっぱりコンサルタントは使えない”という評価になってしまう。
常に明るく積極的な態度
技術系の経営コンサルタントとして起業したので、いつも真面目な顔つきをして営業活動をしていた。しかし、ある時“今日のプレゼンで一度も笑わなかったかも・・”と気づいた。苦虫をかみつぶしたような表情で説明しても、相手に信頼感は与えられない。余裕をもった笑顔で、前向きな態度と説明する内容がマッチしてこそ自信が伝わる。場合によっては話を盛ることで、相手に信用してもらえることもある。もちろん盛った分は後で自分で取り返さなければならない。
人脈を増やし続けること(顧客獲得が最も難しい)
コンサルタントを雇う側からすれば、素性をしらない相手を雇うのはリスクだ。それが個人経営であればなおさらだ。そこに、信頼できる人からの紹介があれば、安心感がぐっと高まる。その機会を多く持つために人脈を増やす努力が必要だ。13年間コンサルタントをしていて、Webサイトからの問合せで顧客と契約ができたことは一度もない。新規に契約ができたのは、すべて人づてに紹介をしてもらった相手だった。
成功の定義を自分で決める
前回の「辛い面」でも書いたが、一人で起業すると、だれも褒めてくれない。なので、自分で自分をほめる基準を作っておく必要がある。どこまで行ったら成功とするのか、成功の定義を自分で決めておくことが重要だ。そうすれば、自分でマイルストーンを確認できるし、自分を褒めることもできる。最もわかりやすいのは、年間の売上や営業利益の目標を決めておくことだ。