今日の経済の仕組みと個人の”稼ぎ方”について、とても解りやすく書いた本が先月発売された。
山崎元『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(Gakken)
経済評論家の故山崎元氏が亡くなる3ケ月前に執筆した著書だ。同氏の息子さんが大学に入学したときに書いた手紙をもとに、経済に関する部分に詳細な説明を加えて出来上がった本だ。


資本主義経済において、「生産」は「資本」と「労働」によって行われる。資本家はリスクを取って投資をし、労働者はリスクをとらずに労働力を提供して収益を得る。


著書の中で山崎氏は、”経済の世界は、リスクを取ってもいいと思う人が、リスクを取りたくない人から利益を吸い上げるようにできている”そして”このことが、今はよりはっきり現れつつある”と言っている。
このことは、フランスの天才経済学者Thomas Pikettyが「21世紀の資本」とう著書で言っている、「 r > g 」つまり、資本収益率が経済成長(所得の増加率)より大きいということでも裏付けられている。


山崎氏は、これからの時代に有利な働き方として、以下の3つを上げている。
(1)株式性の報酬と上手くかかわること
(2)適度なリスクを取ること
(3)他人と同じにならないように工夫すること

それを実現する具体的な方法として次の4つを示す。
(1)自分で起業する
(2)早い段階で起業に参加する
(3)報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く
(4)起業の初期段階で出資させてもらう
いずれも起業に関連している。ソロプレナーは一人でスモールビジネスを起業することで、それが成功すれば事業を拡大して人を雇うようなスタートアップにつながる。

サラリーマンはリスクを取りたくない労働者の集まりだ。しかも取替えが可能な労働者だ。リスクを取らない代わりに安い賃金で安定感を得て満足する。これが悪いとは言わないが、今の時代、損な働き方だという。


転職するにしてもソロプレナーになるにしてもリスクが伴う。ポイントは小さく始めることだ。転職にはリスクがあるが、そこで投資するのは「人的資本」だけだ。クビになってもまたやり直すことができる。ソロプレナーも自己資金のみでしかも生活費に影響しない範囲の副業であれば、失敗したら止めればいい。”肝心なのは、失敗しても借金が残らない形で、何度も試すことだ”と山崎氏は言う。


”適度なリスクをとって、何度も試す”ために必要な”自己投資の中身は、①知識、②スキル、③経験、④人間関係、⑤時間”だという。


山崎氏は著書の中で「資本主義ポジショニング・マップ」というものを提唱している。実に興味深い考察だ。皆さんも自分が今どこにいて、これからどっちの方向を目指すのか、自分自身をあてはめて考えてみてはどうだろうか。

山崎元『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(Gakken)

なお、この本のまとめサイト(記事)がすでに多数掲載されている。そのいくつかのリンクを以下に示すので、本を購入する前にこれらに目を通すのも良いだろう。

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