このシリーズの第2弾は、帰国してしばらく日本で生活して分かったことを、少し詳しく解説してみる。
まずは、スゴイと思ったことを2つ。
コンビニのコピー機がすごい
コンビニのコピー機がサービスのプラットフォームになっている。以前から出張で日本に来るたびに、コンビニのコピー機が進化しているのに驚かされていた。メディアからの印刷やスキャンしてイメージの取り込みくらいまでは、コピー機の本来の機能で”想定の範囲内”だったが、その後いろいろなサービスの”窓口”としての機能が増えてきた。チケットの購入や受け取り、荷物の受け取り、今ではアマゾンの返品までできる。
スゴイと思うのは、コピー機がプラットフォームになって、どんどん新しい機能を更新していることだ。ハードウエアはそのままで、アプリや機能を追加していく。iPhoneやTeslaと同じコンセプトだ。アジアやヨーロッパの国ではどうなのか知らないが、アメリカのコンビニでは見たことがないエコシステムだ。素晴らしいと思う。
首都高がすごい
首都高速中央環状線が、池尻大橋から板橋JCT まで10Km以上にわたってトンネルでつながっている。自分で走ったことがあるのはその区間だが、おそらく2015年に開通した大橋JCT-大井JCT間も同様に地下のようで、全長18Kmのトンネルだ。それ自体もスゴイのだか、その長いトンネルの中でナビが正確に動作するのがすごい。
本来GPSの電波が届かない地下ではカーナビは自身の位置を特定できなくなる。ロサンゼルスのダウンタウンでは高層ビルに囲まれているだけでナビが機能しなくなっていた。カーナビはGPSだけでなく、慣性航法や加速度センサなど種類の異なる複数のセンサからの情報で成り立っているので、一時的にGPSの電波がなくなっても位置の特定はできるようになっている。しかし10Km以上にわたってGPSの電波が届かない状態で出口や合流を正確に表示できている。トンネル走行中は地上の道路との混同がないので、ある時点で道路を首都高に固定してあとは距離と加速度センサを組合わせで実現しているのだろうか。これはスゴイことなのだ。
つぎに、ちょっと残念に思ったこと
家電やナビの操作が複雑
カーナビやテレビから体重計にいたるまで、日本メーカーの機器は、階層構造のメニューに頼っているので、どこに何があるのか、取説を見ないと分からない。とても分かりにくい。iPhoneなんかは、直感的な操作で大体上手くいく。原因が何なのか分析した訳ではないが、開発プロセスの違いではないかと思う。一言で言えば、ユーザーからのフィードバックを取り入れている量の違いだ。
数年前、日本でもデザイン思考(Design Thinking)がもてはやされたが、全く根づいていないように見える。アメリカでは、企業でも大学でもDesign Thinkingが普通になっていて、学生のときから訓練されている。Design Thinkingは理論ではなくスキルだ。スキルはトレーニング(練習)して身につけるもので、本を読んで勉強しただけでは実践で使えない。車の運転もゴルフのスイングも英会話もスキルだ。 日本の製品は、エンジニアが論理的にメニューを組み立てる。 Design Thinkingでは、初期の段階から開発期間を通して、ユーザーからのフィードバックを集めて改良を繰り返す。それがユーザーエクスペリエンスをつくる。日本が世界において行かれているのはこういうところだと思う。